女性のための育毛剤はいつ頃から必要なの?について解説します

脱毛症-女性

かつては中高年の男性の悩みだと思われていた「薄毛」や「抜け毛」の悩みですが、近年は女性の間でも「薄毛」に関する悩みを抱える人が急増中です。

男性と女性の薄毛の悩みというのは似ているようで全く異なるので、女性の脱毛の仕組みや、いつ頃から育毛剤が必要になるのか?など気になる話題について解説していきます。

女性に育毛剤は必要なの?

「薄毛」や「抜け毛」の悩みって、遺伝や男性ホルモンの問題だから女性にはあまり関係ない、と思っていませんか?脱毛にはいろいろなタイプがあり、特に「壮年型脱毛症」と呼ばれる脱毛症の主な原因は

  • 加齢
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 精神的なストレス
  • 生活習慣の乱れ
  • 過激なダイエットによる栄養不足
  • アレルギー
  • 間違ったヘアケアによる頭皮の衛生環境の悪化

によって毛周期が乱れると発生します。「壮年性脱毛症」は脱毛症全体の90%以上を占めるので、男女共「薄毛」や「抜け毛」の悩みというのは、ほぼこの「壮年性脱毛症」であると考えてよいでしょう。

50代の女性は育毛剤適齢期?

「壮年性脱毛症」はさらに3つのタイプに分けることができます。

  1. AGA(男性型脱毛症):脱毛症全体のおよそ80%強を占める
  2. びまん性脱毛症:女性に最も多い脱毛症
  3. FAGA(女性型脱毛症):近年発見された女性の脱毛症

です。女性の場合は「びまん性脱毛症」と「FAGA」に注意が必要なのですが、この2つの脱毛症にはどのような違いがあるのでしょう?

女性の脱毛の悩み:びまん性脱毛症とは?

「びまん」とは「次第に広がっていく」という意味の医学用語です。びまん性脱毛症には頭頂部から脱毛が始まり次第に頭部全体に広がっていくという特徴があります。これが「びまん性脱毛症」と言われる理由です。

患者数は40代ころから増え始め、50代後半になると急増します。主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量不足と考えられています。

これは日本人女性の平均的な閉経年齢が50歳〜51歳で、閉経を挟んだ前後5年間のことを「更年期」といい、前期更年期(45歳頃〜閉経まで)になると緩やかに卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が減り始める時期と、脱毛が起こる時期とが一致することからきています。

女性の脱毛の悩み:FAGA(女性型脱毛症)とは?

FAGAは症状のあらわれかたが「びまん性脱毛症」と酷似しているため、一見すると区別がつきません。しかし、この両者の間には決定的な違いがあります。

それはFAGAが「5αリダクターゼ酵素」と「テストステロン(男性ホルモン)」由来の脱毛症であるということです。

AGAとFAGAの共通点

FAGAについて説明するにはAGA(男性型脱毛症)について知るところから始める必要があります。長らく壮年性脱毛症はAGAとびまん性脱毛症だけだと思われていたからです。

AGAというのは「男性型脱毛症」と言われることからも男性特有の脱毛症です。AGAにはプロペシアやザガーロといった内服治療薬が開発されていて、ある程度発症のメカニズムが解明されています。

AGAをもたらす物質は5α-リダクターゼという「酵素」です。酵素には一つの働きしかなく、5α-リダクターゼは「テストステロン」という男性ホルモンが「ジヒデロテストステロン(DHT)」という別の男性ホルモンに変異する時にのみ働く物質です。

AGA治療薬のプロペシアやザガーロはこの「5α-リダクターゼ」という酵素の働きを阻害し、テストステロンがDHTに変異することを抑制して、脱毛症の進行を遅らせる薬で70%以上の治療効果をあげています。

女性の脱毛症治療についても研究が進められる中で、びまん性脱毛症と思われていた症例の中にAGA治療薬が効果を発揮するタイプの症例が発見されました。

AGA治療薬は5α-リダクターゼにしか作用しないので女性にも「テストステロン(男性ホルモン)」由来の脱毛症があるということが発見されたのです。これが2015年ころから女性型男性型脱毛症=「FAGA」と呼ばれるようになり、2017年に皮膚科学会では呼び名をFAGA(女性型脱毛症)に統一したという経緯があります。

AGAとFAGAの違い

AGAの場合、症状の現れ方がパターン化されています。日本人に最も多いのは額の生え際が後退していく「M字型」と呼ばれるタイプで、欧米人には頭頂部だけが完全脱毛する「O字型」と呼ばれるタイプが多いという統計があります。

一方のFAGAはびまん性脱毛症と同じような発症経緯を辿ります。つまり、頭頂部から脱毛が起こり、全体的なボリュームが減って、つむじや分け目が目立つようになり、髪の毛の色が薄くなるというパターンです。

この違いはどこから来るのかという根本的なことはまだ解明されていませんが、有力な説として、「5α-リダクターゼ」の分布パターンによって異なってくるのではないか?というものがあります。

つまり、男性の場合は額や頭頂部にこの酵素が多く分布していて、女性の場合は頭部全体に満遍なく分泌しているのではないか?という仮説ですね。いずれにしてもFAGAは新しく発見された女性の脱毛症で症例がまだ少ないため、全容の解明には至っていない難治性の皮膚病なのです。

女性の脱毛は進行性だから育毛剤の対策が必要

ところでAGA、FAGA、びまん性脱毛症をまとめて壮年性脱毛症という名前の由来は「加齢」が最大の原因であること、そして壮年性脱毛症は「進行性」の脱毛症であるということに注目しなければなりません。

  • 壮年:働き盛りの事、一般には成人全体を指すが、社会の中核として働く30代〜50代後半までを指すことが多い
  • 進行性:放置していると症状がどんどん進行していくこと

つまり、女性の脱毛症の大半を占める「びまん性脱毛症」と「FAGA」は早期発見、早期治療、または早期対策を講じることで進行を遅らせることが可能ということです。

FAGAにしてもAGAのように完全脱毛班(二度と毛が生えてこない部分)が形成されるわけではないので、育毛剤のケアで十分効果を発揮することが期待できるんですよ。

女性の脱毛の悩みは皮膚科に相談しよう

脱毛症には壮年性脱毛症以外にも「円形脱毛症」や「牽引性脱毛症(ポニーテールや三つ編みなど髪を強く引っぱる髪型で起こる)」、「心因性脱毛症(ストレスや精神疾患が原因で起こる脱毛症)」など幾つかの種類があります。

脱毛症の種類を特定するには皮膚科で検査をしてもらう必要があるので、まずは皮膚科に相談してみましょう。ただし、脱毛症治療は保険証が効かない自由診療なので、診察代や薬代は全額自己負担になります。

一般皮膚科では脱毛症の治療があまり得意ではないところもあるので、AGAクリニックや美容皮膚科、美容外科など自由診療専門の医療機関でも検査や治療を受けることができますが、自由診療は医療機関ごとに料金設定ができるので、同じ薬をもらっても自己負担額が変わってきます。

美容室で女性用育毛剤を勧められたけど…

女性が髪や頭皮の状態を判断してもらうのは「美容院」でも可能ですね。人気のある美容院ではPB(プライベートブランド)の育毛剤を開発して、サロンで販売しているケースもあります。

ただし、育毛剤というのは毛周期を元に戻すためのヘアケア用品なので、最低でも3ヶ月〜6ヶ月は使用し続けないと効果が実感できません。

なぜなら、一度弱った毛根にいくら栄養を与えても丈夫になることはないからです。毛周期を正常にするということは新たに生えてくる毛を丈夫にするということです。

毛髪は日々生え変わっているので、今、退行期から休止期に入っている毛穴に十分な血液と栄養を与えることで、新しく生えてくる毛を健康な状態にすることこそ「正しいヘアケア」になるんですよ。

市販の育毛剤と比べて割高な美容院の育毛剤は継続するのが大変ですし、まずは生活習慣やシャンプーを見直すところから始めることをおすすめします。

市販の女性用育毛剤では何がいい?

女性の脱毛の悩みの大半はびまん性脱毛症もしくはFAGAである、ということはすでにお伝えした通りです。どちらの壮年性脱毛症にも「ミノキシジル」が有効であるという臨床結果が日本皮膚科学会の公表しているガイドラインに記載されています。

ただし、女性の壮年性脱毛症については「1%ミノキシジル」配合外用薬の使用が推奨されていて、市販の育毛剤では「リアップジェンヌ」だけがこれに該当します。したがって最初に選択する育毛剤は医薬品の「リアップジェンヌ」がおすすめということになりますね。

産後に毛がどっと抜けた!これって育毛剤が必要?

脱毛症が起こる大きな原因の一つに「ホルモンバランスの乱れ」というのがあります。加齢からくる壮年性脱毛症も女性の場合は「閉経」前後の5年間でホルモンバランスが大きく乱れることで起こるというのが定説です。

女性の場合、「出産」もホルモンバランスが大きく変化する出来事です。出産後にエストロゲンの分泌量が大きく減ると一気に脱毛を起こすことがあります。これを出産後脱毛症と言います。

しかし、出産後脱毛症は放置していてもホルモンバランスが元に戻ると脱毛症状も落ち着いてくるので、心配するほどの脱毛症ではありません。

女性の育毛剤の「医薬品」、「医薬部外品」って何が違うの?

育毛剤には「医薬品」、「医薬部外品(薬用)」、「化粧品」がありますが違いはなんなのでしょう?

わかりやすく言えば

  • 医薬品:脱毛症の治療を目的として使用する(女性の脱毛症治療薬はリアップジェンヌ)
  • 医薬部外品:厚生労働省が指定する指定医薬品成分を一定量以下配合している商品で、治療ではなく予防を目的として使用する
  • 化粧品:肌(頭皮)や毛髪のコンディションを整え脱毛を起こしにくくする商品

ということになります。早めに脱毛対策をとるならば、化粧品や医薬部外品でもOKですが、実際に脱毛症が起こった場合には皮膚科などの専門医に相談した上で薬を正しく用いるようにしましょう。

生活習慣の乱れや過激なダイエットで起こる脱毛症もあるので、育毛剤の使用と合わせて生活習慣の改善やストレスケアを行うことも重要な脱毛対策になります。

2018年は女性の脱毛事情にとって大きな転換期だった?女性の育毛剤についてのまとめ

日本皮膚科学会では不定期に脱毛症治療のガイドラインを公表しています。2017年には「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」が公表されました。

この中からFAGA(女性型脱毛症)に関する重要な箇所を引用しましょう。

(AGA に対する)新しい治療薬や治療手段が登場したこと,
女性の男性型脱毛症に対する概念の変化があったことなどより今回のガイドラインの改訂に至った

(引用元:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」より)
2017年度版の治療ガイドラインは2018年に各医療機関の治療方針として役立てられます。つまり、FAGAの治療概念に大きな前進があったことで、2018年は女性の脱毛症治療に大きな転換期が訪れたことになるのです。

そういえば最近大手の美容皮膚科が女性専用の脱毛クリニック開院や脱毛症治療に乗り出していますが、その背景にはこのような事情があったんですね。

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