高齢化が進んだ現代の日本では男女共に「脱毛症」の悩みを抱える人が年々増加しています。ただし、一口に「脱毛症」にまとめることはできないということをご存知ですか?
脱毛症全体の約90%を占めるのは「壮年性脱毛症」という皮膚病です。病気の対策には治療薬と、予防のための医薬部外品や化粧品などが用いられます。
今回は脱毛症ごとにおすすめの育毛剤はあるのか?という視点から検証してみました。薄毛が気になる人は必見です。
目次
育毛剤をおすすめる際に求められる条件AGAとは?
日本人の薄毛の悩みの約90%以上は「壮年性脱毛症(または壮年型脱毛症)」と言われるものでこの脱毛症はさらに、
- AGA(男性型脱毛症):脱毛症全体の約85%を占める男性特有の疾患
- FAGA(女性型脱毛症):女性の脱毛症の総称
- びまん性脱毛症:女性に最も多い脱毛症
に分類されます。AGAは数ある脱毛症の中でも、唯一原因が特定されています。そのため治療薬も開発されていて、日本皮膚科学会が策定する「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」ではAGA治療薬(プロペシア、ザガーロなどの内服薬)とミノキシジル外用薬(塗り薬)の併用治療が第一の選択肢になります。
びまん性脱毛症は女性の脱毛症のうち約80%を占めていますが、加齢や精神的なストレスの増加が原因でホルモンバランスが崩れること以外にはっきりとした原因は判明していません。
ところが年々びまん性脱毛症の患者数が増加してくるにつれ、次第に臨床的な研究も進められるようになり、中でも「特定の酵素(5α-リダクターゼ酵素)にしか反応しないAGA治療薬」で改善する脱毛症が特定されるようになりました。これがFAGA(女性型脱毛症)です。
ただし、FAGAが特定の疾患と認識されるようになったのはごく最近のことで、日本皮膚科学会のガイドラインでも2017年になってようやく「女性型脱毛症」という日本語病名が決めらるようになった程度なのが現状です。このため、AGA治療薬の効果は確認されているものの、安全性についてはまだ臨床例が少ないこともあり、現在のところは1%ミノキシジル外用薬による治療が推奨度Aランクになっています。
すこし話がややこしいのですが、FAGA(女性型脱毛症)はびまん性脱毛症との境目が未だにはっきりしておらず、治療方法が不完全な皮膚疾患という扱いになります。
ただし、AGAを始めとする壮年性脱毛症の治療にはミノキシジル外用薬の治療効果が確認されているため、一般的にはこの脱毛症の治療時にミノキシジル製剤が用いられます。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版における推奨度について
疾病(しっぺい)に対する治療法というのは各医学会が策定するガイドラインにしたがって行われるのが一般的です。
脱毛症の中で最も症例が多いのは壮年性脱毛症(特にAGA)なので、育毛剤というのは、ほとんどが壮年性脱毛症の治療もしくは予防対策用に開発されています。
では、実際に男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版ではどの様な治療法が推奨されているのかを説明していきましょう。
まずはガイドライン上の各治療法に対する推奨度について、ですが以下の5段階で評価されています。
- 推奨度A:行うよう強く勧める
- 推奨度B:行うよう勧める
- 推奨度C1:行ってもよい
- 推奨度C2:行わないほうがよい
- 推奨度D:行うべきではない
これを踏まえて、以下に壮年性脱毛症の治療法の推奨度について一覧にしてみました。
治療法 | AGA | FAGA | びまん性脱毛症 |
---|---|---|---|
AGA治療薬 | 推奨度A | 推奨度D | 推奨度D |
5%ミノキシジル外用薬 | 推奨度A | 推奨度D | 推奨度D |
1%ミノキシジル外用薬 | 推奨度A | 推奨度A | 推奨度A |
その他の医薬品、医薬部外品(薬用)、化粧品の育毛剤は推奨度がC1〜C2といったところですね。
AGA対策でおすすめの育毛剤
AGAは全脱毛症の中で最も発症頻度が高い脱毛症です。日本語では男性型脱毛症といわれるだけにほとんどの患者が男性ですが、年齢別にみると
- 20代:およそ10%
- 30代:およそ20%
- 40代:およそ30%
- 50代:およそ40数%
- 60代以降:およそ60%以上
と年代が上がるごとに発症率が上昇していきます。また、AGAは進行性の脱毛症なので、放置していると治るどころかどんどん進行していきます。ただしAGAは発症のメカニズムがある程度解明されていて、AGA治療薬と5%ミノキシジル外用薬の併用で70%以上の高い治療効果を得ることができます。
ところが、完全脱毛を起こしている毛穴からは毛髪が再生するということはないので、20代からしっかりとした育毛ケアに取り組み、AGA予防を優先することが重要とされています。
AGA治療薬やミノキシジル製剤はAGAが発症してから「治療を目的」として投与されますが、日本での5%ミノキシジル製剤は大正製薬のリアップX5プラスとANGFAのスカルプDメディカルミノキ5の2製品に限定されており、効き目や副作用についても同等なので、このどちらかを選ぶことになります。
女性の市販育毛剤でおすすめは?
女性のびまん性脱毛症やFAGA用治療薬として現在発売されているのは「リアップジェンヌ」のみです。
それ以外の女性向け育毛剤の多くは「医薬部外品」か「化粧品」カテゴリーになります。
女性には5%ミノキシジル配合のリアップX5プラスやスカルプDメディカルミノキ5の使用は推奨されていません。ただし「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では1%ミノキシジル外用薬の使用が推奨されています。
市販薬で1%ミノキシジルを配合した女性向けの育毛剤は大正製薬が開発・販売しているリアップジェンヌです。2018年にミノキシジルに関する薬剤特許が切れたので色々な製薬会社がミノキシジル外用薬を発売できるようになりましたが、ほとんどが5%ミノキシジル配合薬なので今の所はリアップジェンヌ1択と見て良いでしょう。
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男性向け育毛剤でおすすめはどれ?
AGA発症のメカニズムは頭皮付近に存在している5α-リダクターゼという酵素の作用で、テストステロンという男性ホルモンがDHT(ジヒデロテストステロン)という違う男性ホルモンに変異することが原因で起こります。
脱毛の原因を「遺伝」のせいにしたがる人がいますが、遺伝で禿げることはごく稀で、最大の原因は年齢やストレスによって基礎代謝が下がり、男性ホルモンの分泌量が低下することで頭皮付近のテストステロンがDHTに変異しておこるのです。
したがって「男性ホルモンが多いと禿げる」というのも都市伝説レベルのデマで、実際にテストステロンには生えてきた毛を太く丈夫にするという作用があるのです。なので原因は男性ホルモンの量の多さではなく5α-リダクターゼという酵素のせい、ということになりますね。
ここで、AGA治療薬の作用を説明しておきましょう。この薬はAGAを引き起こす5α-リダクターゼの働きを阻害して頭皮付近のテストステロンをそのまま毛根に届けることでAGAの進行を遅らせながら毛周期を元に戻すという目的で投与される「酵素阻害剤」と言われるタイプの薬になります。
つまり、AGA治療薬のプロペシアやザガーロはAGAにしか効かないということになります。
一方のミノキシジルはもともと前立腺肥大症の治療用に開発されていた成分で、非常に高い血流改善効果を持ちます。年齢や精神的なストレスで基礎代謝が低下すると血流量も低下するので、それを改善して毛根に栄養素を十分運搬することが目的の治療薬になります。
ただし、このミノキシジルが持つ高い血流改善効果は「かゆみ」、「ヒリヒリとする刺激」、「脂漏性皮膚炎(フケの増大)」、「めまい」、「起立性低血圧(立ちくらみ)」、「頭痛」などの副作用を起こしやすいので使用する時には注意が必要です。
そこでミノキシジルよりはマイルドな血流改善効果をもつ成分を配合している脱毛症治療・予防薬としておすすめなのが「カロヤンプログレEX」(第3類医薬品)か医学部外品の「チャップアップ」などの製品群です。
チャップアップなど「医薬部外品(あるいは薬用)」に分類されている育毛剤は厚生労働省が認めている薬用成分を一定量配合しているので化粧品よりも効果が高く、医薬品よりも副作用のリスクが低いというメリットがあります。ただし、副作用がゼロというわけではないので、使用する際には使用上の注意書きをよく読んで正しく使うようにしてください。
20代からの早めの薄毛対策でおすすめの育毛剤は?
壮年性脱毛症はいずれも進行性疾患なので早めの対策を講じることで予防効果が高くなります。そこで20代から始める早めの育毛対策には「チャップアップ」のような医薬部外品が良いでしょう。
チャップアップには生薬を中心とした血流改善成分や頭皮の衛生面を改善する成分が配合されています。またミノキシジル製剤よりも副作用がマイルドで、1日1回1分間の使用で効果が出るというメリットもあります。
さらにミノキシジル製剤は脱毛班(脱毛している箇所)にのみ薬剤を塗布するので、予防を目的とするならば頭皮全体に塗布するチャップアップのような育毛剤の方が扱いやすいというメリットもあります。
円形脱毛症におすすめの育毛剤とは?
脱毛症には壮年性脱毛症以外にも
- 単純型円形脱毛症
- 多発型円形脱毛症
- 重症型多発型円形脱毛症
- 薬剤性脱毛症
- 心因性脱毛症
- 牽引性脱毛症
- トリコチロマニア
- 尋常性白斑症
など数多くの症例がありますが、治療法が確立されているのはAGAのみです。それ以外の脱毛症はほぼ原因が特定されていない難治性疾患なのです。
ミノキシジルは壮年性脱毛症全体に対しての改善効果が確認されているので、発症後にはミノキシジル製剤を使うのが最適なのですが、それ以外の脱毛症におすすめの育毛剤というのは正直どれをイチオシにしていいのか分からない状態です。
ただ、早めのケアで「予防」を目的とするのならばチャップアップのような「医薬部外品」が適していると思います。
海外製の育毛剤でおすすめはある?
日本で5%ミノキシジル製剤が承認されたのは2009年です。それまではアメリカ製の「ロゲイン」に含まれている2%が最高配合量でした。
またミノキシジルタブレットという飲み薬は元来前立腺肥大症や高血圧の治療薬で日本では承認されていないのであまりおすすめはできません。
日本人の肌質や体質にあった育毛剤は日本で流通しているものが一番リスクが低いと思います。また、日本で承認されていないAGA治療薬や育毛剤を購入するには「個人輸入代業者」を使うという手段がありますが、こちらは合法とはいえ、購入は全て自己責任であり、非常にリスキーな行為です。
脱毛症の根本的な原因はホルモンバランスの乱れと血行障害なので育毛剤によるケアだけでなく、
- 栄養バランスの取れた食事<
- 十分な休息と質の良い睡眠
- 適度な運動
- 過激なダイエットは行わない
- ストレスを発散する
など生活習慣全体の見直しも非常に重要な意味を持ちます。なのでまずは海外性の育毛剤に頼るより、生活習慣を改善するところから始めてみてはいかがでしょうか?
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