フィナステリドは世界中でAGAの治療で用いられている内服薬「プロペシア」の主成分です。日本でも厚生労働省に承認されていて、皮膚科やAGAクリニックなどで処方されています。
このようにAGA治療においては主役クラスの成分なのですが、もともとは前立腺肥大症治療薬として開発されたものでした。
今回はフィナステリドがAGA治療薬になった背景や効果などを解説していきたいと思います。
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目次
フィナステリドとは?
フィナステリドは世界初のAGA治療用内服薬プロペシアの主成分です。もともとは前立腺肥大症やそれに伴う高血圧の治療用に開発されたのですが、治験時に副作用としてAGA改善効果が報告され、その後本格的にAGA治療薬としての開発が始まりました。日本では2005年に厚生労働省が承認しています。
フィナステリドは医療用医薬品の指定を受けているので、一般薬には配合されていません。プロペシアやプロペシアジェネリックを入手するには皮膚科やAGAクリニックで治療を受ける必要性があります。
この薬が承認されたことでAGAは医療機関で治療を受けることが可能という認識が広がったと言っても過言ではありません。
フィナステリドの働き
フィナステリドはAGAの原因物質、「5α-リダクターゼ」の働きを阻害します。5α-リダクターゼは頭皮や前立腺付近に多く分布する「酵素」です。酵素の働きというのはたった一つしかなく、5α-リダクターゼはテストステロンという男性ホルモンをDHTという別の男性ホルモンに変異させる働きになります。
テストステロンやDHTなどの性ホルモンは酵素同様に重要な働きをする物質ですが、酵素との違いは数多くの仕事をこなすという点です。
テストステロンは主に筋肉を太くしたり、造血をサポートしたり、集中力や記憶力を維持するなどとても大切な働きをする物質です。そんな働きの一つに「育毛作用」があります。
男性ホルモンが多いとハゲになるという俗説がありますが、テストステロンが減ると髪の毛が抜けやすくなり逆にハゲになりやすくなってしまいます。
なぜ5α-リダクターゼは頭皮付近にあるの?
AGA(男性型脱毛症)は頭皮付近の5α-リダクターゼによってテストステロンがDHTに変異させられてしまい、毛根にはDHTが届けられて発育不良を起こし、ヘアサイクルが乱れて脱毛を起こすということがわかっています。
ではどうして5α-リダクターゼが頭皮付近に存在してテストステロンの働きを邪魔してしまうのでしょう?
この回答の前にまずはDHT(ジヒデロテストステロン)の働きを理解する必要があります。
DHTにも幾つかの働きがあるのですが、特に重要視されているのは男性の生殖活動に関与しているという点です。男性ホルモンは精巣で作られるため、DHTが不足して生殖活動が鈍ると精巣の機能が低下して、男性ホルモンの合成量自体が少なくなってしまいます。
AGAは深刻な問題ですが、DHT不足で精巣などの男性生殖器が機能低下を起こすともっと深刻な健康被害が起こりかねないので、脳はDHTの方を優先的に合成させようとするのです。
フィナステリドの効果
男性ホルモンの量は20代をピークにしてあとは減っていく一方なので、AGAは年齢を重ねるごとに発症率が上昇していきます。50代では40%以上、60代になると60%以上の人がAGAを発症するという統計が出されています。
フィナステリドの効果は「AGAの進行を遅らせて、ヘアサイクルを正常な状態に近づける」ことです。AGA治療薬なのですが、フィナステリドに発毛効果はありません。現状を維持しながらテストステロンが毛根に届けられるのを助けるという効果です。
ただし、治療効果は非常に高く、日本国内でも60%〜70%の割合でAGAの改善効果が得られたというデータが公開されています。(海外のエビデンスでは98%に達しているところもあります)
フィナステリドはクリニックで処方してもらう薬
厚生労働省ではフィナステリドを「医療用医薬品」として承認しています。医療用医薬品は一般薬とは異なり、医療機関でのみ取り扱うことができる薬のカテゴリーです。
したがって、フィナステリドを入手するには処方箋を出してもらうか、院内処方で出してもらうかなので、いずれにしても医療機関で診察を受ける必要があります。
ただし、一般皮膚科でも治療は可能ですがAGA治療は保険証が効かない自由診療なので治療にかかる費用は100%自己負担になります。
AGA以外の治療効果
フィナステリドは本来前立腺肥大症の治療薬として開発された経緯があります。AGA治療効果は副作用として発見され、その後本格的なAGA治療薬として研究がすすめられて「プロペシア」が誕生します。
したがって、プロペシアにも前立腺障害の改善作用と血流改善効果、降圧作用(血圧を下げる作用)があります。
ただしプロペシアにはフィナステリド配合量0.2mgと1mgが承認されていますが、前立腺肥大症治療薬のプロスカーにはフィナステリドが5mg配合されているので、プロペシアを飲んで劇的に前立腺肥大症が改善するということはありませんし、前立腺肥大症治療を目的としてプロペシアを規定量以上に服用するのは間違いなので絶対にやめてください。
ミノキシジルとの併用がスタンダード
日本皮膚科学会が策定するAGA治療のガイドラインではフィナステリド(またはデュタステリド)の内服と5%ミノキシジル外用薬がAGA治療における推奨度Aランクの治療法になります。
ミノキシジルには発毛効果が認められているので、フィナステリド1mgの内服と5%ミノキシジルの外用薬を併用するのが現代のAGA治療のスタンダードです。
フィナステリドでは効果のないAGAとは?
フィナステリドが作用するのはII型の5α-リダクターゼです。AGAを発症する原因の大半がII型5α-リダクターゼなのですが、II型があるということはI型も存在するのであって、残念ながらI型5α-リダクターゼ由来のAGAに対してフィナステリドは効果が出ません。
このような場合はI型とII型の両方に作用するデュタステリド(薬品名ザガーロ)が処方されます。ただし、ザガーロはプロペシアに比べると副作用リスクが高いこともあり、プロペシアでは効果のでない場合に処方される薬となります。
副作用について
フィナステリドのように特定の酵素にしか作用しない薬を「酵素阻害剤」といいます。酵素阻害剤は体内の他の物質には影響をもたらさないので副作用が少ないというメリットがあります。
ただし、医薬品なので副作用がゼロではありません。
日本国内でフィナステリドを服用した場合に報告された副作用というのは主に2つ
- リビドー(性欲)の低下:およそ1.1%
- ED:0.7%〜0.8%
それ以外にもごく稀(0.001%以下)にフィナステリドに対するアレルギーで起こるアナフィラキシーショックがあり、呼吸困難、動悸、息切れ、全身浮腫、湿疹などが起りえます。
フィナステリドには特に併用禁忌の薬はありませんが、血圧に作用する成分なので、何かしらの持病があり治療を受けている方は前もって処方医に伝えてください。
なお、女性や未成年には処方できない薬です。
ネット通販でフィナステリドを入手するのはOK?
AGA治療は自由診療なので少しでも経済的な負担を軽くするために、国内では承認されていないフィナステリド製剤をネット通販で購入する方もいます。
未承認薬を個人輸入(代行)を使って入手するのは合法的な行為ですが、リスクも伴いますので、利用する個人輸入代行業者の信用性はしっかりと調べましょう。
個人輸入で海外製の薬を入手するときのリスクには
- 副作用が出た場合「副作用被害救済措置制度」の対象外となる
- 副作用や服用方法などの薬剤情報は自分で管理しなければならない
- 申し込んでから入手するまでに1ヶ月以上かかる場合がある
- 相場の影響を受けるので、価格が安定しない
フィナステリドのAGA治療についてのまとめ
フィナステリドは「プロペシア」もしくは「プロペシアジェネリック」として厚生労働省に承認されているAGA治療薬の成分です。
AGA治療にはフィナステリド0.2mgか1mgがありますが、実際の治療に用いられる時は1mgが第一選択肢になります。(5%ミノキシジル外用薬との併用がスタンダードです)
副作用が少なく、治療効果が高いので非常に優れた医療用成分ですが、AGA治療は自由診療であり、医療用医薬品の指定を受けているため、入手するには皮膚科やAGAクリニックで治療を受けて処方箋を出してもらう必要があります。
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