「全身脱毛」というキーワードでネット検索をすると脱毛サロンやクリニックあるいは脱毛法などを紹介したサイト以外にも「全身脱毛症」というキーワードが多数ヒットします。
全身脱毛症は「全身脱毛」とは全く違う意味ですが、語呂が似ているので非常にややこしいですね。全身脱毛を受けたいと思っているのに気がついたら全身脱毛症について解説しているサイトに辿り着いてしまっていた経験を持っている人も多いのではないかと思います。
そこで今回は誤解しやすい「全身脱毛」と「全身脱毛症」についての違いや全身脱毛症って一体何?ということについて解説していきたいと思います。
関連記事脱毛の毛周期とは?サロンやクリニックで脱毛するなら毛周期について理解しておこう!
目次
全身脱毛症とは?
全身脱毛と全身脱毛症の違いを一言で説明するならば「病気かそうでないか」の違いになります。
- 全身脱毛:ムダ毛を処理するために受ける美容脱毛のこと
- 全身脱毛症:何らかの原因で全身の毛や色素が抜けていく病気
同じ脱毛でも全身脱毛の方はあくまでも美容目的(見た目を良くするため)で意図的に脱毛する施術ですが、全身脱毛症になると何かしらの病的な原因があり毛髪も含めて全身の毛が抜けたり色素が抜けてしまう病気なので治療が必要です。
「症」という一文字が加わるだけで「病気」という意味になってしまうので注意が必要ですね。
主な脱毛症一覧
一口に脱毛症といっても複数の症状があります。ここでは主な脱毛症について紹介していきましょう。
- AGA:男性型脱毛症
- FAGA:女性型脱毛症
- びまん性脱毛症:更年期以降の女性に多い脱毛症。頭頂部から始まり次第に頭部全体に脱毛が広がる症状
- 単純型円形脱毛症:脱毛班が1ヶ所だけの一時的な脱毛症
- 多発型円形脱毛症:脱毛班が2ヶ所以上の一時的な脱毛症
- 重症多発型脱毛症:脱毛班が多数あり、全身脱毛症になる可能性がある病気
- 尋常性全身白斑症:身体中の色素が抜けていく難病で、全身脱毛症を代表する疾患
- 牽引性脱毛症:ポニーテールや日本髪など髪の毛を強く引っぱる髪型をしていると起こる脱毛症
- トリコチロマニア:強いストレスで髪の毛を抜いてしまう精神症状。10代以下の女子に多い
皮膚科では一番多いのがAGAですが、近年FAGAも増加傾向にあると言われています。
女性も全身脱毛症になるの?
一般的な脱毛症の治療は皮膚科で行います。日本皮膚科学会の公表しているデータでは脱毛症の治療を受けている人の男女比は男性約9割:女性約1割と言われています。
しかし、これはあくまでもAGAやFAGAと呼ばれる「毛髪に関する脱毛症」のデータで、今回取り上げている全身脱毛症は
- 尋常性白斑症(指定難病)
- 重症型の多発性円形脱毛症
に分類されます。円形脱毛症って頭にできるものじゃないの?と思われる方も多いと思いますが、毛が生えているところではどこでも起こり得るのが円形脱毛症なのです。
一方の尋常性白斑症(じんじょうせいはくはんしょう)というのは毛が抜けるというよりも全身の色素が抜けていく自己免疫性の疾患で国が難病に指定しています。重症型の多発性円形脱毛症も尋常性白斑症も症例数はさほど多くありませんが、男女ともに発症リスクのある病気ですので、女性だからといって油断はできない病気です。
実は白髪も脱毛症?!
加齢やストレスで白髪が増えた…そういう人多いですよね?これは意外と知られていないことなのですが、実は「白髪」も脱毛症の一種なんです。日本人の場合健康な髪の毛の遺伝子は黒い色素(メラニン色素)を合成するようになっています。
「白髪」というと老化やストレスというネガティブなイメージに結びつくことからも健康な毛の状態ではないことがわかりますよね。このイメージ通り、日本人にとって白髪というのはメラニンを合成できなくなってしまった不健康な毛穴から生えている毛のことなのです。
加齢やストレスで新陳代謝が低下すると毛穴の機能も低下していき、健康な毛髪ができなくなり、「脱毛症」が起こります。白髪自体が不健康な毛なので白髪が増えてきたということは医学的にみるとそれだけ脱毛症が進行しているということになるのです。
全身脱毛症は完治する?
実は現代医学では全身脱毛症を完治させる治療法が確認されていません。したがってあくまでも対症療法で症状を軽減させていくことが治療の目的になります。
脱毛症というのはAGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)に対しての治療薬は開発されていますがその治療薬が全身脱毛症に対しても有効かといえばそういうわけでもないのです。
したがって全身脱毛症は現代医学でも治療が困難な病気ということになります。ただし、AGAやFAGAの治療費は全額自己負担の自由診療ですが、全身脱毛症は健康保険が使える保険診療です。
全身脱毛症の原因
全身脱毛症は自己免疫性疾患説や精神疾患説などがあります。平たく言えば「まだ原因が究明できていない病気」ということなのですが、現在有力な原因として考えられている自己免疫性疾患説と精神疾患説について説明していきましょう。
自己免疫性疾患説について
自己免疫性疾患というのは何らかの原因で免疫系のバランスが崩れ、暴走してしまう病気の総称です。全身脱毛症としては尋常性白斑症と重症型多発性円形脱毛症が挙げられますが、全身性の疾患には他にも
- アレルギー性疾患:アトピー性皮膚炎、喘息など
- リウマチ
- 膠原病(こうげんびょう)
- 悪性貧血
- 全身性エリテマトーデス
- 重症筋無力症
など数多くの病気があります。ここに挙げた一覧にある病気は自己免疫性疾患の中でも皮膚症状が起こりやすいものをチョイスしているので、場合によっては全身脱毛症に進行することがあります。
自己免疫性疾患の治療には抗アレルギー剤や保湿剤、ステロイド治療薬などが用いられますが完治させる治療法は確立されておらず、対症療法(投薬を続けながら症状を軽減させる治療法)がメインになります。
精神疾患説について
全身脱毛症の原因が精神疾患の場合には基礎疾患として
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- パニック障害
- 不眠症
- 統合失調症
などを抱えているケースが圧倒的に多いということがわかっています。これらの精神疾患自体完治することはありませんが、寛解(かんかい)すれば全身脱毛症も自然と落ち着きを見せるようになります。
*…寛解とは:投薬やカウンセリングで治療が必要ないレベルまで回復すること
全身脱毛症の治療は病院で!
通常のAGAやFAGAと違い重症度の高い全身脱毛症は保険診療が可能です。特に尋常性白斑症や全身性エリテマトーデスなどは国から難病指定を受けていて治療費に対しての助成制度があるので病院で治療を受けるようにしましょう。
ただし、全身脱毛症は現在完治する見込みのない病気と言われています。診察するのは皮膚科がメインになりますが基礎疾患に他の病気(生活習慣病や精神疾患、その他の代謝異常疾患)の存在がわかった段階で複数の診療科で治療をおこなうこともあります。
全身脱毛症とアレルギー性疾患の関係とは?
全身脱毛症というのは
- 病的な原因で全身の毛周期が乱れて脱毛が進んでしまうケース
- 先天的な原因で毛母細胞や毛包が形成されないケース
- 病的な原因で全身のメラノサイトの活動が停止しているかそれに近い状態にあるケース
が考えられます。アレルギー性疾患には全身性のアトピー性皮膚炎があり、喘息や花粉症で全身の健康状態が悪くなっても皮膚症状(脂漏性皮膚炎や過敏性皮膚炎)が起こりやすくアレルギーを放置して悪化させると全身の毛周期が乱れ全身脱毛症のリスクが上昇します。
アトピーの人は全身脱毛症になりやすい?
アトピー性皮膚炎といえば皮膚疾患の代表的な症状ですね。アレルゲン(アレルギーをもたらす原因物質)に過敏反応して皮膚に湿疹や帯状疱疹のようなできものが多数生じる病気です。
アトピーを起こすアレルゲンには様々なものがありますが代表的なものとしては
- ハウスダスト
- 花粉
- PM2.5などの化学物質
- 刺激の強い食物
- 日光(紫外線)
- 温度差(急に体を冷やしたり温めたりした場合)
などがあります。アトピーが起こる場所は限られている場合と全身に発症する場合があり、全身性のアトピー性皮膚炎は全身脱毛症のリスクの一つに数えられています。
全身脱毛症と免疫について
免疫というのは病原菌やがん細胞から私たちの体を守ってくれている大切な機能です。しかし、時として体調を崩して免疫力が低下したり、またアレルギーによって免疫が暴走すると皮膚にもダメージを与え毛周期が乱れて一時的な全身脱毛を起こす場合があります。
女性の場合は生理不順やPMS(月経前症候群)、妊娠や出産、授乳などでホルモンバランスが乱れ免疫力がアンバランスになると脱毛を起こすケースも報告されています。
全身脱毛症になると眉毛も抜ける?
脱毛症といえば毛髪だけにおこると考えられがちですが毛があるところには必ず毛周期があり、それぞれの部位の毛周期にしたがって生え変わっているので、毛のあるところはどこでも脱毛が起こる危険性があります。
したがって眉毛も例外ではありません。実際に尋常性白斑症や多発性円形脱毛症では眉毛やまつげがすっかり抜け落ちてしまったという症例があります。
全身脱毛症になると陰毛もツルツル?
脱毛を起こす有力な原因の一つには「加齢」があります。毛周期は皮膚のサイクル(=新陳代謝)の影響を強く受けるので新陳代謝が自然と低下する高齢者は全身の毛が薄くなり陰毛が完全に脱毛してしまうケースがあります。
このことからも全身脱毛症になると当然陰毛が全脱毛してしまうことは十分に想定される事態といえますね。
全身脱毛症対策でもっとも簡単なのはウィッグ
全身脱毛症になってもっとも目立つのは首から上の毛です。ボディなら「全身脱毛でツルスベになった」という言い訳もできますが毛髪やまつ毛、眉毛は脱毛のコースには含まれていないのでそれも通用しませんね…。
そこでもっとも手軽な脱毛対策として全日本皮膚科学会でも推奨しているのが「ウィッグ」の使用です。つけまつげもウィッグの一つなので毛髪とまつげはウィッグで隠すことができます。あとはメイクで眉を書いてしまえばほぼ目立たなくすることが可能です。
全身脱毛症についてのまとめ
今回は「全身脱毛症」について説明してみました。全身脱毛症は病気なので専門的な話になってしまい、ちょっと難しかったかもしれません…。
ただ、毛穴も皮膚の一部なので皮膚代謝(新陳代謝)が狂ってしまう以下のような行為はできるだけ避けてストレスケアと生活週間の見直しで全身脱毛症やAGA(男性型脱毛症)、FAGA(女性型脱毛所)などの脱毛症にならないようにしてください。
脱毛症を引き起こしかねない不適切な行為
- 生活習慣の乱れ
- 睡眠不足
- 過激なダイエット
- ストレスを放置する
- 日焼け対策を怠る
- 運動不足